砂漠の薔薇ー42

「ご生母様…」


「ハレムの女たちはみんな知っているわ…あなたが…アスランに求められたのが昨夜だけではない事は…」


 サリーの言葉に驚く凛子に、サリーは、アスランが凛子を求めたのが昨夜一回きりではない事を、ハレムの女たちはみんな知っていると笑いかける。


「だからこそ訊くの…身籠っていないかと…もし身籠っていないと言い張るなら…もう…二度と…アスランとは床を共にできませんよ…?」


 我が子を守りたい凛子に、サリーは、だからこそ身籠っていないかと訊ねているのだ、もし隠し通すなら、アスランと二度と床を共にできなくなるのだと告げる。


「知っています…世継ぎに選ばれなかった男子がどうなるのかも…」


 サリーの言葉に、凛子は、ハレムの掟は昨夜アスランから聴かされ、世継ぎに選ばれなかった男子がどういう運命を辿るのかも聴いていると答える。


「なら…ちゃんと答えて…隠しても…いずれ…わかる事なのよ…」


 妊娠の事実を隠そうとする凛子に、サリーは、隠していてもいずれわかるのだから、正直に言ってほしいと告げる。


「ご生母様の察する通りです…」


 サリーの度重なる問いかけに、凛子は、すでにアスランの子を身籠ってしまった事実を認める。


「ご生母様…お願いです…この子が男子でも…殺さないでください…」


 凛子は、サリーに、もし、生まれてくる子供が男子でも、殺さないで欲しいと嘆願する。


「いろんな民族の血を受け入れて繁栄させていくのがこの国の慣わし…世継ぎに選ばれなかった場合を除いては…殺しはしないわ…」


 凛子の嘆願に、サリーは、いろんな民族の血を受け入れて繁栄させていくのがこの国の慣わしだから、世継ぎに選ばれなかった場合を除いて子供を殺すようなことはしないと答える。