月光花ー15

「かなみさん…僕は…優しくなんかありません…あなたしか見えないあまりに…他の人を傷つけている…そして…あなたも…」


 わたるは優しすぎるというかなみの呟きに、わたるは、かなみを抱き締めながら、自分は、かなみしか見えないあまりに、他の人間を傷つけているし、時に、かなみさえも傷つけてしまっている自分は優しくなどないと呟く。


「わたるさんは…どうして…私を抱けるのですか…?西田に抱かれていた私を…」


 わたるの呟きに、かなみは、どうしてわたるは、西田に抱かれていた痕跡を残したままの自分を抱けるのかと問いかける。


「抱けますよ…かなみさんが…好きだから…」


 かなみの問いかけに、わたるは、かなみが好きだから、かなみを抱けるし、抱きたいと思うと呟く。


「いまのかなみさんは…僕の想いを疑ってかかっていますね…?僕を信じてください…僕の想いを…疑わないでください…」


わたるは、自分の胸の中で泣き続けるかなみを抱き締め直すと、いまのかなみは自分の想いを疑ってかかっていると呟き、続けて、どうか自分の想いだけは疑わないで欲しいと呟く。


「いま…証明してあげます…僕の変わる事のない想いを…」


 わたるは、かなみをその場に横たわらせると、疑う余地などない自分の想いを証明すると呟いた後、かなみの身体に唇を這わせ始める。


「かなみさん…僕は…かなみさんが…好きなんです…かなみさん以外の…女性を抱くなんて…僕にはできません…」


 かなみの身体に唇を這わせながら、わたるは、自分はかなみが好きなのだから、かなみ以外の女性をこの腕に抱くことなんてできないと呟く。


「わたるさん…私も…できる事なら…あなただけに…抱かれていたい…でも…」


「わかっています…かなみさんの…気持ちは…」


できる事なら、わたるだけに抱かれていたいが、自分は西田の籠の鳥である以上、それはできないと呟くかなみに、わたるは、かなみの気持ちはよく分かっていると呟き、かなみに深く口付ける。


「わたるさんを不幸にしかできないと…わかっていながらも…私は…」


「何を言っているのですか…前にも言ったじゃないですか…僕の目には…あなた以外の女性は映らないって…」


 わたるを不幸にしてしまうだけだとわかっていながらも、わたるとの恋を手放せないと呟いたかなみに、わたるは、前にも言った通り、自分の目にはかなみ以外の女性は映らないのだと呟く。


 わたるとかなみは、互いの名を呼び合うと、許されざる恋の高みへと上り詰め、夕闇に包まれた部屋には、わたるとかなみの互いを求め合う声と影が揺らめき続ける。


 試練の時が来ることなど気付くことなく、わたるとかなみの影は揺らめき続ける。