数日後…
「わたる。おはよう」
数日ぶりに会社に出勤してきたわたるに、ゆかりは声を掛ける。
「おはよう」
「そっけないね」
「当たり前だろ。お前はただの同僚だ」
挨拶を軽く受け流され、そっけないと声を掛けるゆかりに、わたるは、ゆかりはただの同僚だと答える。
「いきなり長期休暇取るって言われた時はびっくりしたよ」
「バカンスに行ってた」
「嘘。あの人と過ごしていたんでしょ?」
「だからバカンスに行ったなんだよ」
いきなり長期休暇を取ると言われた時は驚いたと声を掛けてきたゆかりに、わたるは、バカンスに行っていたと答え、本当はかなみと過ごしていたのだろうとゆかりに訊ねられたわたるは、だからバカンスに行っていたになるのだと答える。
「寝ても覚めてもあの人の事なんだね?わたるは」
「そうだな…逢えない時は夢で逢うしかないからな」
寝ても覚めてもわたるはかなみの事しか考えていないのだなとゆかりに訊かれたわたるは、そうだなと呟いた後、逢えない時は夢で逢うしかないのだと答える。
「大体…あの人の悪口言われて…我を失うほどに飲むからだよ…あんなことになったのは…」
「悪かったと思ってる…でも…俺は…お前の気持ちには応える事はできない」
そもそも、あの過ちの原因はかなみの悪口を言われてわたるが荒れたからであって、気持ちが向いてない事はわかっていると呟いたゆかりに、わたるは、悪かったと思ってるが、ゆかりの気持ちに応えてやることはこの先もないと告げる。
「知ってるよ…あの人の名前呼びながら…あんな事されたあたしがみじめだもん…」
ゆかりは、わたるが、酔って間違える程にかなみの事が好きなのはわかってると呟いた後、間違えられたまま抱かれていたなんてみじめすぎると呟く。
「あの人に…ちゃんと言わなきゃ…あたしは酔って間違えられたんだって…」
「青山…」
「いいの…最初から…そうなってるんだもん…」
かなみに本当のこと言わないといけないなと呟いたゆかりを、わたるは何とも言えない顔で見て、ゆかりは最初から勝負になっていないのだから仕方ないと呟く。
「今日にでもあの人に謝っておく…」
ゆかりは、今日にでもかなみを訪ねて、本当のことを言って謝っておくと呟く。
かなみと自分は最初から勝負になっていなかったのだと。