平安恋奇譚ー33

「小梅、なぜ、私の血を飲ませた」


 まりを抱き抱えながら、蒼は、小梅を睨みつけ、なぜ、まりに自分の血を飲ませたのだと詰め寄る。


「飲んだのは、彼女の意志です」


「私の血を飲む危険性を言ってなかっただろ」


 蒼の血を飲んだのはまりの意志だと答える小梅に、蒼は、自分の血を飲む事の危険性を言わなかっただろうと睨みつける。


「でも、蒼様が悪いのですよ…蒼様がまり様を追い込んだのです…気付いていたのでしょう…?まり様の気持ち…そして…蒼様が抱いたまり様への想い…」


 かつてない程の恐ろしい目で睨む蒼に、小梅は平然とまりの気持ちを知っていながら、何もしなかった蒼がまりを追い詰めたのだと答える。


「すべてを治めるには血の盟約しかないことを知っていながら、蒼様は何もしなかった…せめて好きだと言っていれば猶予はあったのに…魔物の王としての自尊心がそれをしなかった…まり様が弱っているとわかっていながら…抱くこともやめられなかった…」


「言うな」


 蒼のまりへの想いを見抜き、まりを想うがゆえに何もできなかった事を責める小梅に、蒼は、ものすごい形相で小梅を睨みつける。


「そうだ…私は…まりを好いている…まりが私に溺れているより…私はまりに溺れている…だからこそ…まりが死んだら…お前を許さない」


 小梅の核心を衝く言葉に、蒼は、まりが自分に溺れている以上に、自分はまりに溺れてしまっているから、まりが死ぬようなことがあれば、小梅を許さないと告げる。


「蒼様のそんな姿…初めて見ましたわ…」


 まりが死んだら、小梅を許さないという蒼の言葉を受けた小梅は、蒼のそんな姿を始めて見たと呟き、部屋を出ていく。


部屋に残された蒼は、必死にまりの名を呼び、まりを抱き締め続ける。