砂漠の薔薇ー41

 翌朝…正式にハレムの一員となった凛子は、このハレムで一番の権力を持つサルタンの生母、つまり、アスランの実母のもとを訪れる。
 
 
「よくいらっしゃいました…あなたが…リンコね…?」
 
 
 得体も知れないはずの東洋の娘である凛子に、アスランの母、サリーはにこやかに笑いかける。
 
 
「私…あなたに…早く会いたかったのよ…アスランが…初めて…所望した娘だと聞いていたから…」
 
 
 蔑まれると思っていたのに、にこやかに迎えられて、驚く凛子に、サリーは、アスランが初めて所望した娘だと聞いていたから、早く凛子に会いたかったのだと笑いかける。
 
 
「ご生母様には…」
 
 
堅苦しい挨拶はいらなくてよ…あなたに訊きたいことがあるの…」
 
 
 このハレムで絶大な力を持つサリーに挨拶を述べようとした凛子を制したサリーは、挨拶よりも凛子に訊いておきたい事があると呟く。
 
 
「単刀直入に訊くわ…あなた…もう…アスランの子を身籠っているのでしょう…?」
 
 
 自分に訊きたい事とは何かとサリーを見上げる凛子に、サリーは、もうすでにアスランの子を身籠っているのだろうと問いかける。
 
 
「いえ…まだ…昨夜…初夜を迎えたばかりですので…」
 
 
「隠してもだめよ…意地悪で言っているんじゃないの…このハレムで生きていくために大事な事だから訊いているの…」
 
 
 サリーの問いに、凛子はアスランに言われた通りに、昨夜、初夜を迎えたばかりだからと答えると、サリーは隠してもだめだと笑い、意地悪で言っているのではなく、このハレムで生きていくために大事な事だから、訊いているのだと声を掛ける。
 
 
「それに…いまのあなたは…私が…アスランを身籠った時と同じだわ…」
 
 
 我が子を守るために、妊娠の事実を隠す凛子に、サリーは、いまの凛子は、自分がアスランを身籠った時と同じ顔をしていると笑いかける。