とある街のとある精神科病院に入院することになった須崎朱里は、初めての精神科病棟への入院に戸惑いと不安を感じていた。
『ついに…入院か…』
精神科病棟に入院した事がなかった朱里は、主治医に告げられた入院という言葉を反芻していた。
入院している患者とはどんな人で、看護師は怖くないかとかで頭が一杯だった。
「こちらが入院していただく病棟になります」
『え?!』
外来担当の看護師に病棟に案内された朱里は驚きを隠せなかった。
なぜなら、そこは閉鎖病棟でもあり、男女混合病棟であったからだ。
閉鎖病棟に入院するとは主治医に告げられてはいたが、男女混合病棟であることは知らされていなかったからだ。
「あの…もしかして…男性看護師もいるのですか…?」
朱里は、案内してくれた看護師に思い切って訊ねた。
朱里はセックス依存もあるが、男性不信も持っていたからだ。
「はい。いますよ。男性患者も居ますからね」
朱里に問いかけられた看護師は、当然でしょうという雰囲気を出しながら答え、ナースステーションを指さした。
そこには精神科に勤めている看護師とは思えない端整な顔立ちの男性看護師がカルテに何やら書き込んでいた。
この男性看護師との出会いが、後の朱里の人生観を変えていく出会いだとは朱里はまだ気付いていなかった。