「弓月さん。先程連絡した今日から入院していただく須崎朱里さんです」
「あぁ…ありがとう…ここから先は僕がするから。須崎さん。初めまして。看護師の弓月です」
朱里を紹介された弓月という男性看護師は、朱里を連れてきた看護師に礼を述べた後、朱里を見て、柔らかな笑みを浮かべた。
「早速だけどこっちに来て。病室に案内するね。精神科病棟だからってそんなに怖がらなくてもいいよ。ここは閉鎖病棟だけど、比較的症状の軽い患者ばかりだから」
初めての精神科入院に戸惑いと不安を覚えている上に、閉鎖病棟という言葉に怯える朱里に、弓月は、朱里を病室に案内しながら、ここは閉鎖病棟だが、比較的症状の軽い患者ばかりだから、そんなに怖がる必要はないと笑いかける。
「須崎さん。ここがあなたの病室になります。あと、僕があなたの担当看護師になりますから、困ったことがあったら何でも言ってください」
「はい…」
朱里を病室へと案内した後、弓月は、自分が朱里の担当看護師になる事を伝え、入院生活で困ったことがあったら何でも言ってくれと朱里に優しく笑いかけ、その柔らかな笑みに、朱里は、いままで感じでいた不安と戸惑いが消えていくのを感じた。
しかし、男性看護師が自分の担当看護師になる事には少し戸惑っていた。
というのも、朱里は母親の再婚相手に性的虐待を受けていたせいで、男性に恐怖を感じるところがあったからだ。
だが、弓月にはその恐怖を感じない。その恐怖を感じさせない弓月の雰囲気に、朱里は戸惑うばかりだった。
「あの…男性看護師さんを見るのって…初めてなんですけど…」
「そうなんですか…でも、女性看護師とやる事は変わらないですよ。ただ、力があるってところの違いくらいしかないですよ」
戸惑いを隠しながら男性看護師を見るのが初めてだと呟く朱里に、弓月は腕力があること以外に女性看護師と仕事は変わらないと笑いかける。