女神の悪戯-3

「偶然ってあるんですね…ぶつかった相手があの生徒会長様だなんて…」


「そうだね」


 偶然にもぶつかった相手が由紀夫だった事に驚く雪菜に、由紀夫はそうだねと笑い、雪菜を見る。本当に綺麗になったと。


「結婚したんだね。名字が違うから別人かと思ったよ」


「はい…二年前に…」


 結婚して名字が変わっているから他人の空似かと思ったと笑う由紀夫に、雪菜は二年前に結婚した事を伝える。左手薬指には結婚指輪がきらりと光っていた。


「よかったら連絡先教えてくれない?高校時代の思い出話をしようよ」


「はい…いいですよ…」


 連絡先を教えてほしいという由紀夫に、雪菜は快く応じ、互いの連絡先を交換し合う。この再会が切なくも苦しい恋に変わるなどとはこの時の二人は予想もしていなかった。



「ただいま」


 雪菜と別れ、家路に着いた由紀夫は、玄関のドアを開け、帰宅を知らせる。


「お帰りなさい。どうしたの?それ」


 由紀夫の帰宅を知り、玄関まで出迎えた由紀夫の妻の雅美は、由紀夫が手に持っていた入手困難な玩具に目を見張る。


「ちょうど一つ残っていたんだ。運がいいだろ?」


 入手困難な玩具を手に入れてきた事に驚く雅美に、ちょうど一つ残っていたんだ、運がいいだろうと笑う。


「佳奈美喜ぶわよ。欲しくてたまらなかったみたいだから」


 運がいいだろうと笑う由紀夫に、雅美は愛娘の佳奈美が喜ぶだろう声を掛ける。由紀夫と雅美は大学の同級生である。


良妻賢母な妻と愛らしい娘と過ごす生活に由紀夫は何の不満はなかった。なかったが、雪菜と再会した事で置き忘れた思い出が蘇っていた。


「あ、こっちだよ」


 衝撃の再会から三か月後、連絡を取り、雪菜と待ち合わせをしていた由紀夫は、少し遅れてやってきた雪菜に手を振る。


「すみません…仕事が片付かなくて…」


 待ち合わせ場所にやってきた雪菜は、由紀夫に小学校での仕事が片付かなくて待ち合わせに遅れた事を詫びる。


「いいよ。俺も今来たところだから」


 待ち合わせに遅れた事を詫びる雪菜に、由紀夫は三十分待っていたのに、今来たところだと笑いかける。


「丸岡さんって…昔と変わらないですね…」


 雪菜を気遣う由紀夫に、雪菜は昔と全く変わっていないと笑う。