女神の悪戯ー2

「あの、お名前は…?」


 あまりに初恋の相手に面影が似ている事が気になった由紀夫は、思わずその女性に名前を訊ねてしまった。


「久能です…久能雪菜です…」


『雪菜?!』


 由紀夫に名前を訊ねられ、名前を名乗った女性の名前に、由紀夫は衝撃を受けずにはいられなかった。


初恋の相手の名前と同じだったからである。面影も似ていて名前も同じという事に、由紀夫は衝撃を受けずにはいられなかったのである。


「よろしかったら…貴方のお名前も訊かせてもらっていいですか…?」


 由紀夫に名前を訊かれて答えた雪菜は、よかったら由紀夫の名前を教えて欲しいと声を掛ける。


初恋の相手にあまりにも似ている由紀夫に、もしかしたら初恋の相手その人なのではないかという淡い期待もこもっていた事は否めなかった。


「由紀夫です。丸岡由紀夫です」


『丸岡由紀夫?!』


 雪菜に名前を訊ねられ、答えた由紀夫の名前に、雪菜は衝撃を覚えた。初恋の相手と同じフルネームだったからである。遠い思い出と思っていたその人に、雪菜は由紀夫に初恋の面影を重ね始めているのを感じていた。


「もしかして…花北高校を卒業してませんか…?」


「してますけど…」


 雪菜に出身校を訊ねられた由紀夫は、なぜ自分の出身校を知っているのだと思いながらも、出身校はその通りだと答える。


「生徒会長もしてましたよね…?」


「しました…」


 出身校はおろか生徒会長も務めたことを知っている雪菜に、なぜこんなに詳しく知っているのかと不思議に思いながらも、その通りだと答える。運命は徐々に二人を近付けていた。


「私…丸岡さんの一年後輩の葉山です…」


『葉山雪菜?!』


 雪菜の旧姓を知った由紀夫は再び驚いた。


初恋の相手その人だったからである。

高校時代の雪菜といえば、全校中のアイドルだったから鮮明に覚えている。


花北高校の男子生徒全員が雪菜に恋心を持っていると言っても過言ではなかった。


自分もその一人だが、その女性が目の前にいる…しかも…名字が変わっている…結婚したんだなと…落胆に似た気持ちが由紀夫の胸に過る。