「うっ…んっ…わたる…さん…?」
少しうめいて目を覚ましたかなみは、わたるの姿を探す。わたるは、隣で満足そうに眠っていた。
「わたるさん…」
わたるの手を取って、その手に頬を寄せてみたら、かなみの目から自然と涙がこぼれる。
この手に自分以外の女性が抱かれたことを知って、嫉妬に狂ってしまいそうになったけれど、わたるがここにいる事が何よりも嬉しいとかなみは思っていた。
「かなみさん…」
その時、わたるがかなみの名を呼んだ。夢の中でも自分を呼んでくれることがかなみは嬉しくてたまらなかった。
「ここにいますよ…」
わたるの声に、かなみは、ここにいると答えると、端正な顔立ちをしたわたるの唇に自分の唇を寄せる。
「かなみさん…どうしたのですか…?泣いてたのですか…?」
その時、わたるが目を覚まし、かなみの涙の痕を見つけ、どうしたのかとかなみに訪ねてきた。
「別に…泣いていたわけでは…」
「じゃあ…どうして…?」
別に泣いていたわけではないと呟くかなみに、わたるは、どうして涙の痕があるのかと問いかける。
「僕のせいですか…?」
「いいえ…ただの嬉し涙です…」
自分のせいで泣いていたのかと問いかけるわたるに、かなみは、首を横に振り、ただの嬉し涙だと答える。
「過ちを犯しておいて…こんなこと言うのは…あれですが…僕が好きなのは…かなみさんだけです…」
嬉し涙を流していただけだというかなみの呟きに、わたるは、過ちを犯しておいて言うのもなんなのだが、自分が心から好きなのはかなみだけだと呟く。
「私も…好きなのは…わたるさんだけです…」
わたるの呟きに、かなみは、自分も、心から好きなのはわたるだけだと呟く。
「社長は愛しているんですよね…?」
「わたるさん…意地悪…言わないでください…」
西田を愛していると言っていたと呟いたわたるに、かなみは、もう意地悪を言うのはやめてくれと呟く。
かなみの呟きに、わたるは、冗談だと笑った後、かなみを抱き締め、かなみに口付ける。
わたるとかなみは、角度を変えながらいつまでも口付け合い続ける。