女神の悪戯ー21

「きて…由紀夫さん…」
 
 果てしなく続きそうな愛撫に、雪菜は、愛撫だけでは物足りないとばかりに、由紀夫の首に手を回すと、由紀夫が欲しいと呟く。今までの逢瀬で、雪菜から由紀夫を求める事はなかった。雪菜自身、自分から求めるのは初めてだった。しかし、由紀夫の吐息だけで達しそうなくらいに限界だった。
 
「雪菜…」
 
 初めて雪菜から求められた由紀夫は、驚きを隠せなかった。隠せなかったが、雪菜が全てをさらけ出してくれたのだと思い、愛おしさでいっぱいになった。
 
「わかった…いまあげるよ…雪菜の欲しいもの…」
 
 由紀夫は、雪菜の頬に唇を寄せて囁くと、雪菜の愛液に塗れた秘丘に自分の分身を差し入れて、緩急を付けながら、雪菜の中を突き上げる。
 
「あっ…んっ…はっ…あっ…」
 
 緩急をつけた由紀夫の突き上げに、雪菜は由紀夫の背中に爪を立てながら、甘くかつ官能的な嬌声を上げる。軋むベッド。滴る汗。雪菜の甘くかつ官能的な嬌声は、由紀夫を高めていく。高められながら、由紀夫は、自分と闘っていた。気を抜いたら雪菜よりも先に達しそうな自分と闘っていた。ひとえに雪菜を絶頂に導きたいという思いであった。
 
「あぁっ…もっ…だっ…めっ…」
 
「いいよ…俺も…限界だから…」
 
 限界を知らせてきた雪菜に、由紀夫は自分も限界だと囁くと、腰の律動を速め、雪菜を絶頂へと導いていく。
 
「あっ…んっ…はっ…あっ…あぁっ…」
 
 雪菜は、全身震わせ、絶頂に達し、雪菜が絶頂に達したのを感じた由紀夫は、雪菜の中に悦楽の飛沫を放つ。共に達した由紀夫と雪菜は、乱れた呼吸のまま、見つめ合うと、どちらからともなく深く口付け合う。
 
翌朝、熱い一夜を過ごしたホテルを出た由紀夫と雪菜は、二人手を取り合って駅へと向かう。共にこれが許さらざる恋ゆえの逃避行になるとわかっていた。わかっていたが、二人は幸せそうに旅立って行った。運命の女神の悪戯に導かれるまま、再会し、恋の炎を燃やし、旅立って行った。この先、二人がどうなったかを知る者は誰もいない。風に消えた二人を責める事は誰にできようか。運命の女神が悪戯で作ったこの恋を責める事はできないだろう。
 運命の女神は悪戯な恋を作る。許されざる恋という悪戯な恋を作る。しかし、人は、そんな恋に命を燃やすのだ。由紀夫と雪菜のように。
 
 
 
 
                               終わり