下弦の月ー5

 ひろきに連れてこられるまま、映画館にやってきたれいかは、まず、映画館の規模に驚く。


街の大きな映画館ではなく、一見、ただのビルだと思ってしまいそうな映画館に、れいかは、こんな映画館で上映される映画とはどんな映画なのか興味を持たずにはいられなかった。


「ここは、穴場の映画館です。場所もそうですが、上演作品も変わっているのです」


 こんな映画館には初めて来たという表情を浮かべるれいかに、ひろきは、この映画館は、上演作品も場所も他とは違う映画館なのだと説明する。


「さぁ、もうすぐ映画が始まりますよ…」


ひろきは、れいかに、もうすぐ映画が始まるから席に着こうと声を掛ける。


「これって…何の映画なの…?」


「言ったでしょ…?変わった映画を上演するって…」


 スクリーンに映し出された映画を見て、驚くれいかに、ひろきは、この映画館は、変わった映画を上演すると言ったはずだと囁きかける。


 その映画は、有名官能小説家の作品が原作の映画で、内容はほぼ濡れ場といっても過言ではない程に、際どいものだった。


「(こんな…作品…レディーに見せるなんて…)」


 映画といったら、恋愛映画だと思っていたれいかは、このような作品の映画を見せられると思っておらず、こんな映画を女性に見せるひろきの映画の選択に、これのどこが満足するデートなのかと思い始めていた。


 しかし、そう思いながらも、視線は、その映画で繰り広げられる濡れ場の数々に釘付けになっていた。


 自分が経験したことがない世界…映画の中で繰り広げられる知らない世界に、れいかは、胸が高鳴っていくのを感じていた。


「気に入ってもらえたみたいですね…」


 映画に釘付けになるれいかを見たひろきは、満足そうに微笑みかける。