下弦の月ー2

「自己紹介がまだでしたね…成瀬ひろきといいます…」


 れいかに名を訪ねられたその男は、自己紹介がまだだったと呟き、自分の名を告げる。


「成瀬ひろきって…成瀬ホールディングスの若き当主ではありませんか…」
「名前を知っていただけてて…光栄です…」


 ひろきの名を知って、いま飛ぶ鳥を落とす勢いの成瀬ホールディングスの若き当主ではないかと呟いたれいかに、ひろきは、名前を知っていてもらって光栄だと笑う。


「組織を大きくするためなら、手段を択ばない方だと聞いてますわ…」


「ビジネスに私情は禁物ですから…」


 成瀬ホールディングスの当主は、冷酷だと評判だと聞いているというれいかに、ひろきは、ビジネスに私情は禁物だと答える。


「面白い方ね…でも…私は…手に入れられなくてよ…?」


 自分に一切のお世辞を言わないひろきに、れいかは興味を持つも、ひろきに、自分は簡単に手に入れられるほど甘くはないと笑う。


「もちろんです…でも…あなたは…僕の恋人になる…」


 自分は簡単に落とせないと笑うれいかに、ひろきは、もちろんだと呟いた後、れいかは必ず自分の恋人になると笑う。


「あなたの恋人に…?私が…?」


 年齢差があると思われるひろきに、れいかは、自分がひろきの恋人になるなんてありえないと答える。


「あなたはあの令息たちでは満足しない…デートコースも…ベッドの上でも…」


 ひろきは、れいかの手を取りながら、れいかを満足させられるのは自分くらいなものだと呟き、れいかの手に口付ける。


 その身のこなしに、れいかは、ひろきに惹かれていくのを感じていた。