九条れいかは、この日、父親の九条龍三が主催するパーティーに参加していた。
しかし、退屈でたまらなかった。
というのも、れいかと仲良くなりたいという自分と同年代くらいの参加者たちに辟易していた。
「みんな…同じ事しか言わない…みんな…九条龍三の娘としてしか見てないのよね…」
同年代の令息たちのお世辞に近い求婚の言葉を聞いても、れいかは、何もときめきを感じなかった。
「もう少し…笑ったらどうですか…?」
「誰?」
もう少し笑えという声にれいかが振り返ると、そこには、長身の男が立っていた。
「だって…退屈なんですもの…」
その男の声に、れいかは、退屈なのだから、仕方ないじゃないかと答える。
「わがままなお嬢様だ…」
「なんですって…失礼な人ね…」
れいかの退屈だという返事に、長身の男は、わがままなお嬢様だとれいかの事を笑い、笑われたれいかは失礼な人だと憤慨する。
「失礼?せっかく令息たちがあなたに求婚しているのに、愛想笑いもしないあなたの方が失礼ですよ」
「私は、あんなおべっかに引っかかりません」
愛想笑いもしないれいかの方が失礼だというその男に、れいかは、自分はあんなおべっかに引っかかるほど愚かではないと答える。
「あなた…名前は…?」
自分に一切のお世辞を言わないその男が気になったれいかは、その男に名を訊ねる。