それから…数週間後…アスランは、日本から来たという使者を目の前にしていた。
「日本からの使者が…我が国に何の用だ…?」
一国の王への礼儀を欠かさぬ態度の使者に、アスランは、外交を一切していない日本の使者がこの国に何の用があるのかと問いかける。
「ひと月ほど前に…欧州へ向かう我が国の船が海賊に襲われ…囚われた者がこちらにいるという情報を耳にしましたので…確認のために…」
日本からの使者という男は、ひと月ほど前に、欧州へ向かう日本の船が海賊に襲われた際に、囚われた者がこの国にいるという情報を耳にしたから確認のためにこの国を訪ねたのだと答える。
「なるほど。海賊がこの国の者だと思ったということだな…それで囚われた者の名は…?」
日本の使者の答えに、アスランは、海賊がこの国の人間だと思ったのだなと呟き、その囚われた者の名を使者に訊ねる。
「こちらにいます…伊集院伯爵の娘…凛子嬢です…」
使者は、囚われた者というのが、自分と共にいる伊集院伯爵の娘の凛子だと答える。
「私は…その凛子嬢の婚約者でもある…九条弘樹と申します…」
伊集院伯爵の娘の凛子がこの国にいるという情報を耳にしたと言っていた使者は、自分はその凛子の婚約者だと告げる。
「リンコ…聞き覚えのある名前だな…」
この者たちが探しているのが凛子だと気付いたアスランは、凛子を引き渡さなければならないと感じながらも、凛子を手放したくない思いに、聞き覚えはあるが知らないと答える。
しかし、凛子の存在を快く思わない家臣の一人が、凛子がこの王宮のハレムで暮らしていると漏らす。
「凛子嬢がここにいるのですね?引き渡してください」