大奥恋絵巻ー9

「あ、や、んっ、こわれっ、る…」


 初めて知る圧迫感と甘い疼きに、お妙は身体を仰け反らせ、迫りくる快感に耐え続ける。


「好い…好いぞ…」


 お妙が小さく達する度に、お妙の中は、家治に達しそうなほどの好さを与え、その度に、家治は堪えながら、お妙を貪り続ける。


 一度果てた家治は、その後、何度も何度も、お妙が指一本動かせなくなるまで、お妙を求め続けた。


 その夜の家治の様子は、大奥中に広まり、お菊の方は家治の寵愛が、お妙に移る事を危惧し、瑤子は、大奥の権勢を我が物にできる可能性に笑う。


「お美津…いい娘を連れてきた…上さんが…あの娘を寵愛したら…お菊も…いままでのように威張れまい…」


 瑤子は、お妙を連れてきたお美津に、家治が気に入るような娘をよくぞ連れてきたと呟き、お菊の方が歯ぎしりしているのが目に浮かぶと高笑いする。


「これで…もし…お妙が孕むことになれば…世継ぎ争いはわからぬやもしれぬ…」


 このまま家治がお妙を寵愛して、お妙が懐妊する事になれば、世継ぎ争いはわからないかもしれないと、瑤子は算段する。


「しかし…お菊の方様には…」


「まだ…幼子じゃ…いつどうなるかわからぬ」


 お菊の方には、世継ぎともいえる男子がいると呟いたお美津に、瑤子は、その男子はまだ幼子だからいつ病でこの世を去るかわからぬと答える。


「上さんも…重臣たちも…保険は掛けておきたいであろうな…」


 瑤子は、家治もその重臣たちも世継ぎがお菊の方が産んだ男子一人だけでは心もとないと考えているはずだと呟く。


 お妙の知らぬところで大奥の権勢争いは熾烈を極めお妙はその渦中に巻き込まれていく。