その夜…お妙は、身を清められ、お美津の導くままに、家治を迎える寝所へと向かう。
「いいですね…?上様のお心のままに…お任せするのですよ…」
寝所に向かいながら、お美津は、お妙に、家治の望むままに身を任せるようにと諭し、くれぐれも自分に許婚がいるなんて口にしないよう諭す。
「お美津様…私…」
「何の心配もいりません…上様にお任せするのです…」
いきなりの事にまだ戸惑うお妙に、お美津は、家治に身を任せればいいのであって、何の心配もいらないと笑いかける。
寝所には一つの布団に二つの枕が並べてあり、それを見たお妙は、もう抗う事ができない自分の立場に身を竦める。
その時、お妙同様に身を清めた家治が寝所に現れた。
「上様…今宵は…」
「堅苦しい挨拶はいらない…お妙と言ったな…こちらに来るがいい…」
お美津に教わった挨拶を述べようとしたお妙に、家治は、堅苦しい挨拶はいらぬと呟き、お妙の手を取る。
「上様…」
家治に手を取られたお妙は、抗えないとわかりながらも、家治の真摯な視線に身体を固くする。
「初い反応だな…気に入った…」
いまから始まる時間に、身体を固くするお妙に、家治は、ふっと笑うと、お妙が気に入ったと呟き、お妙を抱き寄せる。
「そんなに怖がらずともよい…取って食いはせぬ…」
自分の腕の中で微かに震えるお妙に、家治は、別に乱暴は働かないと囁き、お妙を布団に横たわらせる。