大奥恋絵巻ー5

その夜…お妙は、身を清められ、お美津の導くままに、家治を迎える寝所へと向かう。


「いいですね…?上様のお心のままに…お任せするのですよ…」


 寝所に向かいながら、お美津は、お妙に、家治の望むままに身を任せるようにと諭し、くれぐれも自分に許婚がいるなんて口にしないよう諭す。


「お美津様…私…」


「何の心配もいりません…上様にお任せするのです…」


 いきなりの事にまだ戸惑うお妙に、お美津は、家治に身を任せればいいのであって、何の心配もいらないと笑いかける。


 寝所には一つの布団に二つの枕が並べてあり、それを見たお妙は、もう抗う事ができない自分の立場に身を竦める。


 その時、お妙同様に身を清めた家治が寝所に現れた。


「上様…今宵は…」


堅苦しい挨拶はいらない…お妙と言ったな…こちらに来るがいい…」


 お美津に教わった挨拶を述べようとしたお妙に、家治は、堅苦しい挨拶はいらぬと呟き、お妙の手を取る。


「上様…」


 家治に手を取られたお妙は、抗えないとわかりながらも、家治の真摯な視線に身体を固くする。


「初い反応だな…気に入った…」


 いまから始まる時間に、身体を固くするお妙に、家治は、ふっと笑うと、お妙が気に入ったと呟き、お妙を抱き寄せる。


「そんなに怖がらずともよい…取って食いはせぬ…」


 自分の腕の中で微かに震えるお妙に、家治は、別に乱暴は働かないと囁き、お妙を布団に横たわらせる。