『先生にもまだ言っていないこと…まだあるしなぁ…』
雪田との初めての診察を終えた半年後、晴美は夜の繁華街に佇みながら、雪田にも言っていない秘密に思いを馳せていた。
晴美が夜の繁華街に居るのに大した理由などない。
そう…行きずりの恋の相手探し…やめようと思いながらも晴美はそれをやめずにはいられなかった。
「槙田さん?」
『え?』
自分を本名で呼ぶどこか聞き覚えのある声に、晴美は驚きながらその声に振り返る。振り返るとそこには雪田が立っていた。
「こんなところで何してるの?」
「ただの待ち合わせです」
こんなところで何をしてるのかという雪田の問いに、夜の繁華街という思わぬ場所で雪田に会ったことの気まずさを感じながらも、晴美はただの待ち合わせだと嘘をつく。