酔芙蓉ー6

「本当に…かなみは…初めてだったのだな…」
 
 シーツに残る赤い斑点を見た西田は、本当にかなみは処女だったのだなと布団の上に横たわるかなみに声を掛ける。
 
「すみません…気を使わせてしまって…」
 
「何を言う…嬉しいのだ…こんなわしに…こんな大切なものを…捧げてくれて…」
 
 気を使わせてすまなかったと呟いたかなみに、西田は、こんな自分に純潔を捧げてくれた事が嬉しくてたまらないのだと呟く。
 
「無理にとは言わないが…わしは…かなみを…大切にしたい…かなみ…わしだけのものになってくれ…」
 
 西田は、かなみに、かなみの純潔を奪った責任として。かなみを大切にするから自分だけのものになってほしいと、かなみに呟く。
 
「西田様…」
 
 西田の告白に、かなみの心は揺れる。純潔を奪った相手と一生を共にすると決めていたが、それが妻子ある西田とは思っていなかったから、揺れに揺れていた。愛人という立場に自分が耐えられるかどうかわからなかった。しかし、西田とはただの客とホステスの関係ではいられないという予感もしていた。
 
「わかりました…西田様の…籠に入りましょう…」
 
 思案を張り巡らせたあと、かなみは、西田に、西田の籠の鳥になると告げる。
「かなみ…いいのか…?わしの籠の鳥になるという事は…もう他の男の物になれないという事だぞ…?」
 
 かなみの返事を聞いた西田は、かなみが自分の囲われるという事は、もう他の男性と恋愛ができないという事だと確かめるように問いかける。
 
「わかっています…でも…私たちは…元の私たちには戻れません…」
 
 西田の問いかけに、かなみは、わかっていると呟いた後、続けて、もう自分たちは元の客とホステスの関係には戻れないと呟く。
 
「かなみ…大切にするぞ…わしの残りの人生に賭けて…」
 
「はい…お願いいたします…西田様…」
 
 自分の残りの人生に賭けて大切にすると呟いた西田に、かなみは、お願いいたしますと笑いかける。
 
「かなみ…これからは…わしは…お前の旦那様だ…」
 
「はい…旦那様…」
 
 これからは自分の事は旦那様と呼ぶようにと声を掛けた西田に、かなみは、はいと答える。それから、二人は再び交わった。
 
 それから、数年後にかなみは参加した茶会で出逢った皆川わたると運命的な禁断の恋に落ちるが、この時のかなみはまだ気付く余地もなかった。
                                
                           終わり