酔芙蓉ー4

「西田…様…それは…西田様の籠の鳥になれという事ですか…?」
 
 西田の言葉を聞いたかなみは、西田の籠の鳥になれという事かと問いかける。
 
「嫌なら…強制はしないが…わしの気持ちを知って欲しい…」
 
 自分が切り出した言葉に戸惑いを見せるかなみに、西田は、自分の本気をわかってほしいと呟く。
 
「それは…もう少し考えさせてください…でも…今夜は…そばにいてくれませんか…?」
 
 西田の言葉に、西田の籠の鳥になるかどうかという返事は待ってほしいと答えた後、今夜はそばにいて欲しいと呟く。
 
「彩乃…わしとて男だ…ただそばにいるだけでは済ませられないぞ…?」
 
「わかっています…それでも…なぜかそばにいて欲しいのです…」
 
 そばにいて欲しいというかなみの言葉に、西田は、自分とてさっきの支配人と同じ男だから、ただそばにいるだけじゃ済ませられないと言う西田に、かなみは、わかっていると呟いた後、続けて、なぜか西田にそばにいて欲しいと思うのだと呟く。
 
「彩乃…」
 
「西田様…」
 
 その瞬間、かなみと西田の視線が重なった。自然というかどちらからともなく唇を重ねる。
 
それが深いものとなるのに時間はかからなかった。
 
「彩乃…お前の…本当の名前は…何ていうのだい…?」
 
 かなみの着物の帯を解きながら、西田は、かなみに、かなみの本名を訊ねる。
「かなみ…です…」
 
 帯を解かれ、着物を脱がされながら、かなみは、西田に、本名を名乗る。
 
「かなみか…いい名前だ…」
 
 かなみを横たわらせた西田は、いい名前だと呟いた後、かなみの身体に唇を落とす。
 
「西田…様…」
 
 西田に唇を落とされたかなみは、目を閉じ、西田の愛撫を受ける。これは、もう、西田の籠の鳥になるしかないと覚悟しながら。
 
 かなみが覚悟するのには理由があった。かなみは、まだ純潔を保っていて、その純潔を奪った相手と一生を共にすると決めていた。それが今夜決まってしまう。後悔はないが、それが、西田というのは想像していなかった。
 
「あっ…西田…様…私…」
 
「男性を知らないわけではなかろう…?」
 
「それが…」
 
 西田にまだ純潔を保っている事を伝えようとしたかなみに、西田は、まさか男性を知らぬ身体ではないだろうと問いかけ、かなみはそのまさかだと言いかける。
 
「彩乃…いや…かなみ…男を知らぬのか…?」
 
 かなみの言いかけた言葉を察した西田は、かなみに本当に処女なのかと訊ねる。