下弦の月ー19

「それではまた。デートしましょう」


 れいかを自宅としているマンションの前まで送って来たひろきは、またデートをしようと告げると、れいかの頬に口付けて帰っていった。


「(何なの…?紳士なのか…野獣なのか…わからない…あの態度は…)」


 映画館という暗闇の中やエレベーターの中という場所で欲情を誘って来たかと思えば、帰り際の頬への口付けだけというひろきの行為に、れいかはただ戸惑う。


「(でも…指だけで…イカされたのなんて…初めてだわ…)」


 エレベーターの中という場所だけでなく、指だけであそこまでなったのは初めてだったれいかは、益々ひろきに惹かれていくのを感じていた。


「(あっ…身体の奥が…まだ熱い…)」


 ひろきに弄ばれた乙女の丘に燻っている熱を感じたれいかは、そっと下着の中に手を忍ばせると、ひろきの指の動きを真似るように、自分の指を動かし始める。


「あっ…んっ…やっ…んっ…はっ…んっ…ふっ…くっ…あぁっ…」


 ひろきに指で弄られた時とは若干劣るが、甘い快感が、全身を駆け巡り、れいかはひろきの指の動きを思い出しながら、乙女の丘の頂にある陰核を弄り続ける。


「あっ…んっ…ひろき…さん…だめっ…いっちゃう…」


 駆け抜けた小さな絶頂の前兆に、れいかは、ひろきの名を呼びながら、小さな絶頂へと上り詰めていく。


「はぁ…はぁ…自分で…自分を…慰めてしまった…」


 自慰行為をしたことはなかったわけではないが、ただ指で弄ばれただけなのに、ひろきの名を呼びながら、自慰行為に走ってしまった自分を、れいかは信じられずにいた。


「(ひろきさん…私…あなたを…)」


 ひろきにされた行為によって、自分の中に目覚めた何かを感じ取ったれいかは、ひろきにただ惹かれたのではない事を、自慰行為によって思い知らされる。