それからしばらくして、寝室だと思われる部屋から黒髪の綺麗な女性が出てきた。
「こんばんは。瞳さん」
「こんばんは…成瀬さん…」
奥の寝室から出てきた瞳に、ひろきは、こんばんはと声を掛け、声を掛けられた瞳は、ひろきにこんばんはと返す。
「お客様なら…起こしてくださっても構いませんでしたのに…」
瞳は、ひかるに来客があったのなら、起こしてくれても構わなかったのにと呟く。
「いいんだよ。瞳さん。僕らは客というようなものじゃないから」
「でも…そちらのお嬢様は…」
自分達は客というものではないから、気遣いはいらないというひろきに、瞳は、れいかを見ながら、ひろきはそうでもれいかは違うのではと呟く。
「紹介するよ。彼女がさっき話していた月河瞳さん。葛城の公私共にわたるパートナーなんだ。瞳さん、紹介するよ。彼女は九条れいかさんっていうんだ」
「初めまして…月河瞳です…」
ひろきはれいかに瞳を紹介し、紹介された瞳は、れいかにしなやかに自己紹介する。
「九条れいか…です…今日は疲れているところを起こしてすみません…」
「疲れている…?私が…?」
疲れているところを起こしてすまなかったと呟いたれいかに、瞳は、自分が疲れているとはどういうことかと首をかしげる。
「あの…その…」
「僕たちが来た時は、お楽しみの最中だったのですよ。瞳さん」
言葉に詰まるれいかに代わってひろきが、瞳に自分達が来た時はちょうどひかるとの睦み合いの最中だったのだと答える。