追及の手を休めない正幸に、雪菜は誤解だと言い続けるしかなかった。
それが今、雪菜がつける雪菜の精一杯の嘘だった。
由紀夫には由紀夫の家庭がある。たとえどんなに由紀夫を愛し始めていても、由紀夫の家庭を壊す事だけはできないと考えていた。
「私以外の男に抱かれたのか…?」
「だから誤解です」
自分以外の男に抱かれたのかと追及する正幸に、雪菜は誤解だと言い続ける。由紀夫を守るために。
「私しか知らぬと言っていたじゃないか…」
「そうです。私はあなた以外の男性は知りません」
自分以外の男性を知らないと言っていたじゃないかと、雪菜の肩を揺する正幸に、雪菜はその通りだと答え続ける。その時、雪菜の携帯の着信音が鳴った。間が悪い着信に、雪菜はひたすら電話が早く切れてくれることを雪菜は祈るしかなかった。
「雪菜…もし本当なら…今から私と夫婦生活を営もうじゃないか」
「今から…ですか…?」
本当なら今から夫婦生活を営もうと言い出した正幸に、雪菜は由紀夫との情事の名残りを知られるのではないかと戸惑った。その戸惑いを知ってか知らずか、正幸は無理矢理雪菜を寝室へ連れて行くと、寝室のベッドに雪菜を押し倒す。
「あなた…やめてください…」
押し倒された雪菜は、いつもと違い乱暴な正幸に、やめるよう呟き続ける。
それでもやめない正幸に、雪菜は衣服を脱がされ、生まれたままの姿になった身体に唇を這わせられる。
雪菜は自分のものだと呟きながら、正幸は雪菜の身体に唇を這わせ続ける。その正幸の姿に何も言えなくなった雪菜は、正幸のなすがままになるしかなかった。自分はこの人の妻なのだと痛感していた。
それと同時に由紀夫にはもう逢えないなと考えていた。
その頃、由紀夫の身にも同じことが起きていた。
「あなた。浮気してるでしょ?」
「してないよ」
浮気をしているだろうと言う雅美に、由紀夫は浮気などしていないと答える。浮気と呼ぶにはあまりにも雪菜を愛し始めていた。だからこれはただの浮気ではないといえば浮気ではない。
「久能先生と一緒に居るところを見たって言っている人が居るのよ」
「久能先生って?」
「佳奈美の担任の久能雪菜先生よ」
「なんだって」
雅美の言葉に、由紀夫は衝撃を受ける。雪菜が佳奈美の担任…しかも、雪菜と一緒に居るところを見たと言う保護者が居たらしい。
雪菜を守るために、由紀夫は一緒に居たのは誤解だと言い続ける。