砂漠の薔薇ー6

「いやっ…ここから出して」


 ハレムと思われる場所に連れ来られ、そのハレムの一室に押し込められた凛子は、必死に固く閉ざされた扉をたたく。


しかし、扉は開かれることはなかった。


「私…どうなってしまうの…?」


 凛子は、自分の行く末に不安を感じずにはいられなかった。


婚約者のいる身でこんなところに囚われて、もし、あのアスランというサルタンに貞操を奪われなどしたら、婚約者の弘樹に会えることはおろか、故郷に帰る事もできなくなる。


「そうよ…誇りを失ってはいけない…」


 アスランも誇りある一国の王なら、こちらの誇りも尊重してくれるはずに違いないと思った凛子は、もしまた、アスランと向き合う時が来たなら誇りを忘れた行動を取るまいと心に決める。


 そして、夜になった。


 凛子は、ハレムの侍女たちに身体を洗われ、こちらの夜着に着替えさせられ、今夜確実にアスランの夜伽をさせられるという事態に、身が震えるのを感じた。


 固く閉ざされていた扉が開き、凛子と同じような姿をしたアスランが部屋の中へと入って来た。


ジパングの娘…なかなか…その衣裳も似合っているな…」


ジパングの娘ではありません…私には凛子という名前があります…」


 凛子をジパングの娘と呼ぶアスランに、凛子は、自分にはちゃんと名前があるのだと答える。


「随分…強気だな…」


 凛子の毅然とした態度に、アスランは、苦笑いにも似た笑みを浮かべると、凛子との間合いを詰めていく。