凛子たちが乗る船が、海賊が出没する海域に入った頃、船の中が慌ただしくなる。
「お父様」
「どうやら海賊に出くわしてしまったらしい」
船の中の異様な慌ただしさに、何かあったのかと訊ねる凛子に、伊集院伯爵は、この船が海賊に出くわしてしまったらしいと答える。
「どうなりますの?」
「慌てるな…何があっても…伯爵令嬢としての誇りを忘れるな…」
自分たちはどうなるのかと訊ねてきた凛子に、伊集院伯爵は、例え、海賊に捕らわれる事になっても、伯爵令嬢としての誇りを忘れるなと声を掛ける。
そんなやり取りをしていた凛子と伊集院伯爵のところに、海賊と思われる男たちがやって来た。
「大人しくしろ。命を奪いはしない」
海賊たちは、凛子たちに武器を突き付けながら、大人しくすれば命までは奪わないと告げる。
「お前はこっちに来い」
海賊の一人の男は、伊集院伯爵に縋り付きながら怯える凛子の腕を掴むと、伊集院伯爵から引き離す。
「凛子」
「お父様」
いままさに海賊に捕らわれようとしている娘を悲痛な声で呼ぶ伊集院伯爵に、凛子は、海賊に連れ去られながら、父の名を呼び続ける。
「今日の獲物はこれでいいだろう…」
海賊たちは凛子を上から下まで見た後、今日の獲物は凛子で十分だと笑い、凛子を自分たちの船へと連れて行った。