「さぁ、どうぞ、あやかさん」
「ありがとうございます…」
パーティー会場に到着し、リムジンを降りた紫苑に手を差し出されたあやかは、ありがとうと呟いた後、紫苑が差し出した手を取る。
「大丈夫…僕に任せて…君は普通にしていればいいから…」
慣れないドレスとヒールに足を取られるあやかに、紫苑は、あやかの腰を支えながら、自分に任せておけば大丈夫だからと声を掛け、颯爽と歩き始める。
「綾小路。今日は招いてくれてありがとう」
「おぉ、御影。よく来てくれた。そちらの御嬢さんは?」
紫苑は、このパーティーの主催者である綾小路公彦に声を掛け、公彦も紫苑によく来てくれたと声を掛け、あやかを見た公彦は今日連れている女性は誰かと紫苑に訊ねる。
「こちらは、白岡あやかさん。僕の知人だ」
「初めまして…白岡…あやか…と申します…」
紫苑は、公彦にあやかを知人と紹介し、紹介されたあやかは、公彦に自分の名を名乗り、見様見真似の会釈をする。
「素敵な方だ…きっと育ちもいいのでしょうね」
「そんな事は…」
あやかを育ちがよさそうな素敵な方だと感心する公彦に、あやかはそんな事はないとはにかんだように笑う。
「御影。見てみろ。お前が女性なんか連れてくるから、他の令嬢たちとご婦人方の落ち込みようを」
「彼女は特別さ。きっとこのパーティーの主役になる」
「あの…紫苑…様…」
「何だい?それに、どうして僕を紫苑様って呼ぶんだい?」
紫苑があやかを連れてきた事で羨望の眼差しがあやかに集まり、それに耐えられないとばかりに紫苑を見たあやかに、紫苑は何かと問いかけた後、どうして自分を様付で呼ぶのかと問いかける。
「この間のパーティーに連れて行ってくれた友人がそう呼んでいたから…」
「そうなんだ。でも、君には紫苑さんって呼んで欲しいな」
初めて声を掛けられたパーティーに連れて行ってもらったみはるが紫苑をそう呼んでいたからと答えたあやかに、紫苑は、そうなんだと呟いた後、あやかには様付で呼ばないで欲しいと笑いかける。
パーティーは、紫苑の予想通りあやかに視線が集中し、賑やかさを増していった。