純白の恋人ー5

「じゃあ、今度の日曜日の夜、迎えに来るからね」


「はい…」


 今度の日曜日の夜に迎えに来ると言い残し、帰っていく紫苑を見送ったあやかは、自分はとんでもない相手に目を付けられたものだと思っていた。断るに断れなくなった事態に、あやかは戸惑うしかなかった。


「(どういうつもりなのかしら…?)」


 気まぐれにしてはお金がかかっている気がするし、本気だとも思えない紫苑の行動にあやかはただ戸惑う。


 そこへ、みはるから電話がかかってきた。電話の内容は、今度の日曜日の夜に御影家に次ぐ家柄の綾小路家の御曹司が主催するパーティーに招かれたのだが、一緒に行かないかというものだった。


しかし、紫苑にパーティーに連れて行かれる事がわかっているあやかは、月曜日が早いからと断りを入れる。なぜか紫苑にパーティーに連れて行かれるとは言えなかった。


そして…当日の日曜日…あやかは、美容院で髪をセットし、紫苑に買ってもらったドレス一式に身を包み、紫苑が迎えに来てくれるのを待っていた。


「やぁ…お待たせ…」


 約束の時間から十分くらいして紫苑が迎えに来た。長身と端整な顔立ちに合ったタキシード姿の紫苑に、あやかは心を奪われる。


「外で待ってるなんて…寒かったんじゃない…?」


「いいえ…それよりも…この姿を見られる方が…恥ずかしかったです…」


 外で自分を待っていたなんて寒かったのではないかと声を掛けてきた紫苑に、あやかは、外で待つ寒さよりも、ドレス姿をチラチラと通行人に見られていた方が恥ずかしくて、寒さを感じるどころではなかったと答える。


「しかし…よく似合ってるね…髪形も素敵だ…今日の主役は君で間違いない…」


 ドレス一式に身を包み、髪を綺麗にまとめ上げたあやかを見た紫苑は、やはり今日のパーティーの主役はあやかで間違いないと呟く。


「そんな…褒めすぎです…馬子にも衣裳です…」


 自分を褒める紫苑に、あやかは、褒めすぎだと呟いた後、続けて、馬子にも衣裳だと答える。


「だから、君は自分の魅力に気付いていないって言うんだよ…もっと自分に自信を持って…あやかさん…」


「御影さん…」


「あと、僕の事は紫苑って呼んでくれないかな?」


 もっと自分に自信を持っていいのだと声を掛けてきた紫苑を見上げたあやかに、紫苑は、これからは自分の事は紫苑と呼んで欲しいと笑いかける。そうこうしているうちに紫苑とあやかを乗せたリムジンは、パーティー会場に到着する。