「なんなのですか?あの態度」
お美津は、お菊の方のお妙を値踏みし、脅しを掛ける態度に憤慨する。
「お菊の方様を責めてはいけません…」
お菊の方の自分への態度に憤慨するお美津に、お妙は、お菊の方を責めてはいけないと声を掛ける。
「ですが…いま…上様のご寵愛を得ているのは…」
「そんな事…明日になったらわからぬ事です…」
いま、家治の寵愛を得ているのは、お妙ではないかと呟くお美津に、お妙は、家治の心向きなど今夜にも変わる事もあるものだと呟く。
「もっと…自信をお持ちください…いまや…お妙様は…」
「だから…上様のお心は明日にも変わるものだと言っているではありませんか…」
いまやお妙は、家治の寵愛を一身に受けている身なのだから、もっと自信を持ってお菊の方はじめとする側室たちに立ち向かえばいいと呟くお美津に、お妙は、家治の寵愛する相手などいつ変わるかわからないだろうと言っているではないかと呟く。
「さぁ、御台様にご挨拶を…お妙様が上様のご寵愛を得てからご機嫌がよろしいのですよ」
「そうですね…」
お妙が家治の執心を得てから、瑤子の機嫌がやけにいいと呟いたお美津に、お妙は、深くため息を吐きながら、瑤子のもとに挨拶に向かおうと呟く。
自分は家治の執心を得た事で、瑤子とお菊の方の権勢争いの駒にされている。
そう自覚しながらも、抗う事が許されないお妙は、今日も機嫌がいいであろう瑤子のもとへと歩き出す。
いま、家治の執心を得ているお妙が歩けば、みな、道を開け、傅く。
たった数晩でこんなに周囲の態度が変わるものなのかとお妙は逆に恐ろしさを感じていた。