それから…数時間後…
「わたるさん…」
「こっちです…かなみさん…」
「あれほど…危険な事はしないでって…お願いしたではありませんか…」
「すみません…でも…」
あれほど危険な真似はしないで欲しいと言ったではないかと呟いてきたかなみに、わたるはすみませんと謝った後、どうしてもかなみに逢いたかったのだと呟く。
「西田がもし帰らなかったら…どうするつもりだったのですか…?」
「たぶん…ここに…いたと思います…かなみさんが来てくれるまで…」
もし、西田が帰らず、ここに泊まっていたらどうするつもりだったのかと問いかけるかなみに、わたるは、その時は、かなみがこの金木犀のそばに来てくれるのを待っていたと思うと答える。
「わたるさん…あなたって人は…」
「すみません…でも…僕の気持ち…わかってください…」
どうしてこんな危険を冒すのかと呟いたかなみに、わたるは、すみませんと呟いた後、危険を冒してまでもかなみに逢いたい自分の気持ちをわかってほしいと呟く。
「かなみさん…逢いたかったです…」
わたるは、かなみを抱き締めると、かなみの唇に自分の唇を重ねる。口付けは深いものへと変わり、許されない逢瀬を知っているかのように、月は雲に隠れ、闇夜に包まれた裏庭で、わたるとかなみは、いつまでも口付け合い続ける。
「中へ…お入りください…」
「いいのですか…?」
「そんな…冷たい身体で帰すわけにはいきません…」
かなみは、わたるに、家の中に入るよう促し、いいのかと問いかけるわたるに、そんな冷たい身体になったままで帰すわけにはいかないと答える。
「かなみさん…こんな事…訊いたら…あれですけど…やっぱり…今夜…」
一度乱れたとわかるかなみの髪を見ながら、わたるは、やはり、今夜は西田に抱かれていたのかと問いかける。
「そうです…私は…西田の籠の鳥ですから…」
わたるの問いに、かなみは、そうだと答えた後、自分は西田の籠の鳥なのだから、西田に抱かれて当然の身の上なのだと呟く。
「気に障ったのなら…謝ります…」
かなみの呟きに、わたるは、ただ訊いてみただけであって、気に障ったのなら謝ると、かなみに呟く。