翌日…わたるは、もうすでに日課となっているかなみの家の庭先に花があるかどうかを確かめにやって来ていた。
「(昨日の今日だけど…今日は…逢えるかな…?)」
昨日、逢いたい想いを抑えきれず、月の闇に紛れて逢いに行ったが、今日、逢えたらいいなとわたるは思っていた。
「(あ…薔薇だ…)」
かなみの家の庭先に飾ってあった真紅の薔薇を見たわたるは、牡丹の時同様、その薔薇にかなみの影を重ねていた。
「今日は…ありきたりな花ですが…」
「かなみさん…」
わたるが薔薇に見とれていたら、家の中からかなみが現れ、今日はありきたりだが薔薇を飾ったのだと呟く。
「花があるという事は…かなみさん…」
「西田は来ません…」
花があるという事は、今日は家の中に入ってもいいかという事かと訊ねるわたるに、かなみは、今日は西田の来訪はないと答える。
「薔薇…綺麗ですね…」
「花言葉は…たくさんあるのですが…情熱です…」
「情熱…それは…昨夜の僕の事を言っているのですか…?」
「そうですね…月の闇に紛れて逢いに来るあたりは…」
真紅の薔薇には情熱という意味の花言葉があると教えてもらったわたるは、それは昨夜の自分の事を言っているのかと訊ね、かなみも、そうですねと呟いた後、続けて、月の闇に紛れて逢いに来るあたりはそうだと呟く。
「僕は…あなたのためなら…どんな危険も冒します…危ない橋だって渡ってみせます…」
かなみの言葉に、わたるは、自分はかなみのためならどんな危険も冒すし、危ない橋だって渡ってみせると呟く。
「でも…昨夜みたいな事は…やめてください…もしもの事を考えたらと思うと…」
わたるの呟きに、かなみは、もしもの事を考えたらと思うと怖くてたまらないから、昨夜のように闇に紛れて逢いに来るのはやめて欲しいと呟く。
「わかっています…でも…昨夜はどうしても…あなたに逢いたい気持ちが…抑えきれなくて…」
かなみに、危険な真似はやめて欲しいと言われたわたるは、わかっていると呟いた後、昨夜はどうしても逢いたい気持ちが抑えきれなくて、月の闇に紛れてかなみの家を訪ねてしまったのだと呟く。