純白の恋人ー2

「あやか。すごい。紫苑様と仲良くなれて」
 
 
 パーティーの帰り道、あやかをパーティーに連れてきた森村みはるは、あやかに、あの紫苑と仲良くなれてすごいと声を掛ける。
 
 
 
 みはるは、御影財閥ほどの家柄ではないが、れっきとした森村財閥の令嬢で、あやかとは親友の間柄である。
 
 
 
「別に…仲良くなったわけでは…ないわ…」
 
 
 
 みはるに紫苑と仲良くなれてすごいと声を掛けられたあやかは、別に仲良くなったわけではないと答える。たぶん、あれは、金持ちのお坊ちゃまの気まぐれに過ぎないと。
 
 
 
「でも、紫苑様があんな風に女性に声を掛けることなんて、いままでなかったのよ」
 
 
 
 別に仲良くなったわけではないと答えたあやかに、みはるは、紫苑がいままで参加したパーティーで自ら女性に声を掛けた事などなかったのだと声を掛ける。
 
 
 
「もしかしたら…紫苑様に見初められたのかも?」
 
 
 
「そんなわけないじゃない…あれは…その紫苑様の気まぐれよ…」
 
 
 
 もしかしたら紫苑に見初められたのではと声を掛けてきたみはるに、あやかは、あれは紫苑の気まぐれの行動だと答える。
 
 
 
「謙遜しないの。見たでしょ?紫苑様に連れられてるあやかを見たほかのご令嬢たちやご婦人方の目。もう羨ましい限りって目をしていたわ」
 
 
 
「わからないわ…もう…一杯一杯で…」
 
 
 
 紫苑にエスコートされているあやかを見た他の令嬢たちとご婦人方の目が羨ましい限りという目をしていたと声を掛けてきたみはるに、あやかは、紫苑みたいな人間にエスコートされて、どうしたらいいかに気持ちを奪われていてそれどころではなかったと答える。
 
 
 
「あやかは美人だし、それに」
 
 
 
「没落した家の…しかも…愛人の娘なんて…あんな方が相手にするわけないでしょ?」
 
 
 
 あやかは美人だし、没落したとはいえそれなりの家柄じゃないかと言おうとしたみはるの言葉を遮るように、あやかは、没落した家のしかも愛人の娘など紫苑のような人間が相手にするわけじゃないだろうと問いかける。
 
 
 
「今日は、その紫苑様の気まぐれ。見初められたなんてあるわけないわ」
 
 
 
 でもと言いかけるみはるに、あやかは、今日は紫苑が気まぐれを起こして自分を相手にしただけであって、見初められたなどありえないと笑いかける。
 
 
 
「でも…みはる…悪かったわね…ドレスまで借りてしまって…」
 
 
「いいのよ。でも、あやかならシンデレラになれそうな気がするんだけどな…」
 
 
 みはるに今日のパーティーに参加するばかりかドレスまで借りてしまって悪かったと呟くあやかに、みはるはそんな事気にするなと笑った後、あやかならシンデレラみたいになれそうな気がすると呟く。
 
 
「冗談はやめて。みはる。そんな夢話あるわけないじゃない」
 
 
 
 みはるの呟きに、あやかは、夢みたいな冗談はやめて欲しいと笑いかける。