「(御影紫苑さん…素敵な方だけど…)」
あやかは、紫苑に心を奪われはしたが、自分とは別世界の人間だから交わる事はないだろうと思っていた。なぜなら、紫苑は元華族で御影財閥の御曹司という人間で、自分はしがないOLだからだ。
しかし、運命はあやかと紫苑を引き合わせる。
「(あの子…可愛いな…)」
紫苑もまた、パーティー会場の片隅に佇むあやかに目を奪われていた。着ている衣装は場違いではないものの、似合っていない感じが紫苑の心を奪っていた。
「君…名前は…?」
紫苑は、会場の片隅で佇むあやかに思い切って声を掛ける。
「白岡…あやか…です…」
紫苑に声を掛けられたあやかは、驚きを隠せないながらも、紫苑に名前を名乗る。
「白岡…あやか…いい名前だ…僕は…」
「御影…紫苑さん…ですよね…?さっき…壇上でご挨拶なされていましたよね…?」
あやかの名前を知り、いい名前だと呟いた後に、自分の名前を名乗ろうとした紫苑に、あやかは、さっき壇上で挨拶していたのを見ていたから名前は知っていると答える。
「見ていたのかい…?実を言うと…ああいう挨拶は苦手でね…」
「仕方ありませんわ…あなたは…こういう場に必要な方ですもの…」
「君は…どうして…このパーティーに?」
「友人に連れられて…でも…こういうところは…初めてで…」
「じゃあ…僕がエスコートしてあげよう…行こう…あやかさん…」
「えっ…?あの…」
「心配しないで…僕に任せておけば大丈夫だから…」
あやかのシンデレラストーリーはここに幕を開けた。