女神の悪戯ー12

「今夜は…帰さなくても…いいんだね…?」
 
 雪菜を抱き締めながら、由紀夫は雪菜に確かめるように、本当に今夜は帰さなくてもいいのかと問いかける。
 
「はい…」
 
 由紀夫の問いかけに、雪菜ははいと答えた後、抱いてくださいと言わんばかりに由紀夫にきつく抱き付く。雪菜とて逢いたさは募っていた。しかし、夫の正幸を欺く方法を知らない。そんな時、正幸が学会で遠方に出かけると聞いて、由紀夫に逢いたい気持ちが抑えきれなくなったのだ。
 
「雪菜…」
 
 自分にきつく抱き付く雪菜を抱き締め直した由紀夫は、切なげに雪菜の名を呼ぶ。それは魂の叫びだった。許されないとわかっていながらも、雪菜を求めずにはいられない由紀夫の魂の叫びだった。由紀夫と雪菜は、見つめ合うと、記憶を辿るように指先を動かし合い、もう一度口付けを交わし合い続ける。
 
「雪菜…もう我慢できない…」
 
 長い口付けの後、由紀夫は雪菜に我慢も限界だと呟くと、服を着たままの雪菜をベッドへと押し倒す。
 
「だめ…服に…しわが…」
 
 由紀夫に押し倒された雪菜は、進んでくる由紀夫の愛撫に反応しながらも、服にしわができたら困ると呟き続ける。
 
「でも…限界なんだ…」
 
 服にしわができたら困ると呟く雪菜に、由紀夫は再度我慢も限界なのだと答えると、でもと言いかける雪菜の口を塞ぐように口付ける。その口付けに、諦めの境地に達した雪菜は、その口付けに応える。
 
「今夜の俺は…もう…止められないよ…」
 
 長くて深い口付けの後、由紀夫は雪菜の黒髪を撫でながら、今夜の自分はもう自分でも制御できなくなっているくらいに欲情が高まっていると雪菜に囁く。窓の外は夕闇から宵闇へと変わりつつあった。
 
「はぁっ…うっ…んっ…」
 
 由紀夫の細やかでかつ熱い愛撫に、雪菜の躰は初めて結ばれたあの日と同じ、いや、それ以上に熱を帯びて、白い素肌が益々赤みを増させていた。
 
「綺麗だ…雪菜…綺麗だよ…」
 
 自分の拙い愛撫にこれでもかという程の反応を見せる雪菜に、神々しさを感じた由紀夫は、雪菜の耳元に綺麗だと何度も囁きかけ続ける。
 
「雪菜…もう…」
 
 由紀夫の愛撫によって高められていった雪菜を見た由紀夫は、雪菜にもう限界とばかりに、一つになりたいと囁く。