皆川わたると出会う数年前…綾瀬かなみは、カルチャースクールで日舞を教える傍ら、夜の街でホステスとして働いていた。
着物がとても似合うホステスがいるとその界隈ではかなみは有名だった。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花という言葉を地でいっているとしてかなみは有名だった。
そのかなみに運命の出会いが訪れる。
「ここに、着物がよく似合うホステスがいると聞いてきたのだが…」
「はい。彩乃さんですね…?こちらで少々お待ちください」
西田源蔵は、この界隈に着物がよく似合うホステスがいると聞きつけて、そのホステスであるかなみの顔を拝みに来たのだった。しかし、彩乃ことかなみは接客中で西田は待つことにした。
「ご指名ありがとうございます…彩乃です…」
夜の街で働いているとは思えない清純な雰囲気で彩乃ことかなみは西田の前に現れ、西田は一瞬にしてかなみに心を奪われた。
「まぁ、座りなさい」
「はい…失礼します…」
西田に座るよう促されたかなみは、西田の隣に座り、西田に水割りを作り始める。
「噂に違わぬ着物の似合いぶりだ…」
「お褒めに預かり…ありがとうございます…」
噂に違わぬ着物の似合いぶりだとかなみに感嘆する西田に、かなみはいつもの返事を返す。
「お世辞ではない…わしは…アパレル業界の人間だから、着物を着慣れてるかそうでないかはすぐにわかる」
「そうですか…?本業は…日舞の講師なんです…」
お世辞ではなく、本当に着物が似合っていると声を掛ける西田に、かなみは、本業は日舞の講師だから着物を着る機会が多いだけだと答える。
「日舞の講師…か…さぞかし踊りも上手いのだろうな…」
「日舞の名取りや師範なんて…子供の時からやっていれば取れます…」
「いや…わしの娘も日舞を習っているのだが…名取りすらも持っておらん…」
かなみの呟きに、西田は、自分の娘も日舞を習っているが名取りすら持っていないと答える。
「きっと…難しい…流派なのですね…」
西田の呟きに、かなみは、西田の娘が習っている流派はきっと難しい流派なのだなと呟く。
西田とかなみは日舞という共通点で意気投合した。西田とかなみの運命の出会いの第一歩はまずはこんな感じだった。