花灯篭ー30

「年越したら…初詣も行きましょうね…」
「えぇ…行きましょう…」
 年末年始をかなみと過ごせると知ったわたるは、できる事は全部やっておきたいとばかりに、かなみにお願いする。
 かなみもまた、それを嬉しそうに受け入れる。
「来年も…たくさん一緒にいられるように…お祈りしないといけないな…」
「わたるさんったら…」
 来年も一緒に過ごせる時間が欲しいと呟いたわたるに、かなみは嬉しそうに笑う。来年もやっぱり、秘密の関係…秘密の場所に行って、秘密の関係を結ぶだけの関係…でも、秘密が増える度に、胸がときめいていく…
 庭先にはまだ、葉牡丹が揺れている…
「かなみさん…」
「何ですか…?」
「僕…いま…すごく幸せです…」
「そうですか…でも…あの約束は…忘れないでくださいね…?」
 かなみと聖なる夜を過ごせて幸せだと呟くわたるに、かなみは嬉しそうに笑うと、約束を忘れないで欲しいと呟く。
「もちろんです…」
「絶対ですよ…?」
「これから先も…ぼくがデザインした物は…絶対あげます…」
 商品化されるわたるがデザインを手がけた和装小物をかなみにプレゼントすると約束していたわたるは、絶対くださいねと呟くかなみに、これから先も自分がデザインした物は、必ずかなみにプレゼントすると誓う。
 わたるは、来年もっと庭先に花が咲きますようにと聖なる夜に祈る。かなみも、来年はもっと庭先に花を咲かせられますようにと聖なる夜に祈る。
「かなみさん…聖なる夜に…一緒にいてくれることに…感謝します…」
「わたるさん…」
 聖なる夜に一緒にいてくれる事に感謝すると呟き、唇を寄せてきたわたるに、かなみは、その唇に自分の唇を寄せる。情事の合図とは違うけど、想いを伝えるには大切なキスをわたるとかなみは交わし合う。お互いの温もりが感じられるキスを交わし合う。
 やがて…そのキスは深いものになっていったが、聖なる夜に神様が許してくれた時間だから、冬の夜長を感じながら、わたるとかなみは、吐息を混じり合わせ、指を絡ませ合いながら、想いを伝えあい続ける。
 聖なる夜に抱かれて…共に眠りに就きたい…燃える肌を寄せ合って…お互いを感じながら…朝になれば覚めてしまう夢でも…いまは…このまま…聖なる夜に抱かれて…共に眠りに就かせて欲しいと…わたるとかなみは聖なる夜に祈り続ける。