「ここまで…していただく義理なんて…私にはありません…」
「いいんだよ…僕が祝いたいんだ…君の特別な夜を…」
確かに純潔を捧げる事になりそうな雰囲気だったけど、ここまでしてもらう程の事ではないと呟くあやかに、紫苑は、自分があやかの特別な夜を祝いたいのだと答える。
「記念に残る夜になったかい?」
「はい…それはもう…十分すぎる程に…」
記念に残る夜になったかと訊ねる紫苑に、あやかは、十分すぎる程記念に残る夜になったと答える。十三万もするドンペリを飲まされたらそれは記念になるだろうと思いながら。
「じゃあ…最後の仕上げの入ってもいいね…?」
「えっ…?」
突然シャンパングラスを置き、あやかに近付き、特別な夜の最後の仕上げに入ってもいいかと訊ねる紫苑に、あやかは、ついにその時が来たと思いながらも、戸惑うように紫苑を見上げる。
「紫苑…さん…」
「もう黙って…これ以上焦らされたら…本当に押し倒してしまいそうになるから…」
心の準備がまだだと言いかけたあやかに、紫苑は、あやかの唇に人差し指を押し当てると、これ以上焦らされたら、本当に押し倒してしまいそうになると呟き、あやかに口付ける。
「さぁ、さっきの続きを始めよう…」
紫苑は、先程の続きを始めようと呟くと、慣れた手つきであやかの着ていたドレスを脱がしにかかり、紫苑によって脱がされたドレスは、その場にするりと落ちていく。
「下着さえも清楚だ…」
あやかの上下白の下着を見た紫苑は、下着さえも清楚だと呟いた後、あやかを抱き上げ、再びあやかをベッドに運び、ベッドに横たわらせる。
「もう今度こそ…僕は…止められないよ…?いいかい…?」
「はい…」
もう今度こそ自分は止まらないと呟く紫苑に、あやかは来る時が来たと覚悟を決めたように紫苑に頷く。
「あやかさん…なるべく優しく抱くけど…優しく抱けなかったら…ごめんね…」
「紫苑さんに…お任せします…」
優しく抱くつもりだが、優しく抱けなかったらすまないと囁く紫苑に、あやかは、すべて紫苑に任せると答える。
「あやかさん…」
覚悟を決めたように、目を閉じるあやかに、紫苑は、優しく名前を呼び掛けると、あやかに深く口付け、あやかの首筋に唇を落とす。
紫苑があやかの首筋に唇を落とした瞬間、あやかは、まだ見ぬ世界への扉が開いたことに少しだけ震えていた。