純白の恋人ー10

 そのホテルの最高級のスイートルーム…そんな部屋に連れてこられたあやかは、まず、部屋に驚く。スイートルームなんて縁がないと思っていたから、部屋の豪華さに驚くばかりだった。



「どうしたの?」


 部屋の豪華さに、あやかが驚いていると、紫苑がどうかしたのかと声を掛けてきた。


「いえっ…こんなところは初めてなもので…」


 どうかしたのかという紫苑の問いに、あやかは、こういう部屋に来るのは初めてだから驚いているだけだと答える。


「ここは…僕の定宿なんだ…いつでも…来られるようにしてある…」


 部屋に驚くあやかに、紫苑は、このホテルは自分の定宿で、この部屋はいつでも使えるように貸し切ってあると笑いかける。


「ここに…連れてきた意味…わかるよね…?」


「はい…でも…」


 この部屋にあやかを連れてきた意味はわかるだろうと問いかけてきた紫苑に、あやかは、意味はわかるが、どこまで紫苑が本気かわからないと呟く。


「この部屋に…女性を連れてきたのは…君が初めてだよ…」


「そんな事…ないはずです…」


 このスイートルームに女性を連れてきたのはあやかが初めてだと呟く紫苑に、あやかは、そんな事はないはずだと呟き返す。


「どうして…僕を疑ってかかるのかな…?」


「私とあなたとでは住む世界が違い過ぎるからです…」


 どうして自分を疑ってかかるのという紫苑に、あやかは自分と紫苑では住んでいる世界が違い過ぎるからと呟く。


「今日の君は…他のご令嬢たちやご婦人方にもひけを取らない程に魅力的だった…だから…僕は…君を知りたくなった…それだけじゃだめかい…?」


 住む世界が違うと言うあやかに、紫苑は、今日のあやかは、パーティーに参加していた令嬢たちや婦人方にもひけを取らない程に魅力的だったのだから、もっとあやかを知りたくなったという理由だけではだめなのかと問いかける。


「私は…紫苑さんの事…何も知りません…」


「これから知っていけばいいよ…僕が…いかに…君に惹かれているかも…」


 紫苑の事をまだ何も知らないというあやかに、紫苑は、これから知っていけばいいと呟き、続けて、いかに自分があやかに惹かれているかも知ってほしいと呟いた後、あやかの背中を包み込むように抱き締める。


「紫苑さん…」


 背中から抱き締められた事で、紫苑の吐息を感じるようになったあやかは、胸が高鳴っていくのを感じていた。