紫苑と出会ったパーティーから数日後…あやかはいつも通りの生活をしていた。朝起きて、満員電車に揺られて、会社に通い、会社での業務をこなす。しかし、その日の夕方は少し違っていた。
「やぁ…白岡あやかさん」
「あ…あなたは…」
目の前に止まったリムジンにあやかが驚いていたら、リムジンの中から紫苑が降りて来てあやかに声を掛け、声を掛けられたあやかは驚きでその場に立ち尽くす。
「何の御用ですか…?私なんかに…?」
「今度…友人が主催するパーティーがあるんです…それで…あなたに…」
自分のような人間に何の用かと訊ねるあやかに、紫苑は、今度友人が主催するパーティーがあるから、あやかにも一緒に参加してもらいたいと思って来たのだと答える。
「無理です…私には…」
紫苑の言葉に、あやかは、自分のような人間が紫苑の相手役など務められるわけがないと答える。
「それに…私…そんなところに着ていくような服…持っていませんから…」
紫苑の相手役なんておろか自分はパーティーに着ていくようなドレスなど持っていないと呟く。
「この間のは?」
「友人に借りた物です…」
この間のドレスではだめなのかと問いかけてきた紫苑に、あやかは、この間のドレスは親友のみはるから借りたドレスだったのだと答える。
「どうりで…似合ってないと思った…じゃあ…行こうか?」
「えっ?」
どうりで似合っていないと思っていたと呟いた後、あやかの手を取った紫苑に、あやかは、戸惑いながらも、紫苑に手を取られるまま、紫苑が乗っていたリムジンに乗り込む。
「あの…いまから…どこへ…連れて行くつもり…なんですか…?」
初めて乗るリムジンと隣に座る紫苑の端整な顔立ちにドキドキしながらも、あやかは、紫苑にこれからどこへ連れて行くつもりなのかと問いかける。
「君に似合うドレスを買いに行くんだよ」
「そんな…困ります…」
いまからあやかに似合うドレスを買いに行くと告げる紫苑に、あやかは、そんなことしてもらったら困ると呟く。
「遠慮しないで。君は自分の魅力に気付いてない。そこらの令嬢とひけを取らない程の魅力に」
ドレスを買ってもらうなんてできないと呟くあやかに、紫苑は、あやかはまだ他の令嬢とひけを取らない程に魅力的だという事に気付いていないと笑いかける。