純白の恋人ー1

 白岡あやかは、とあるパーティーに参加していた。そのパーティーのゲストの一人に目を奪われた。


「(御影紫苑さん…素敵な方だけど…)」


 あやかは、紫苑に心を奪われはしたが、自分とは別世界の人間だから交わる事はないだろうと思っていた。なぜなら、紫苑は元華族で御影財閥の御曹司という人間で、自分はしがないOLだからだ。


 しかし、運命はあやかと紫苑を引き合わせる。


「(あの子…可愛いな…)」


 紫苑もまた、パーティー会場の片隅に佇むあやかに目を奪われていた。着ている衣装は場違いではないものの、似合っていない感じが紫苑の心を奪っていた。


「君…名前は…?」


 紫苑は、会場の片隅で佇むあやかに思い切って声を掛ける。


「白岡…あやか…です…」


 紫苑に声を掛けられたあやかは、驚きを隠せないながらも、紫苑に名前を名乗る。


「白岡…あやか…いい名前だ…僕は…」


「御影…紫苑さん…ですよね…?さっき…壇上でご挨拶なされていましたよね…?」


 あやかの名前を知り、いい名前だと呟いた後に、自分の名前を名乗ろうとした紫苑に、あやかは、さっき壇上で挨拶していたのを見ていたから名前は知っていると答える。


「見ていたのかい…?実を言うと…ああいう挨拶は苦手でね…」


「仕方ありませんわ…あなたは…こういう場に必要な方ですもの…」


 パーティーの挨拶は苦手だと笑う紫苑に、あやかは、紫苑みたいな人間は、こういうパーティーには必要な人間なのだから仕方ないのだと呟く。


「君は…どうして…このパーティーに?」


「友人に連れられて…でも…こういうところは…初めてで…」


 紫苑にどうしてこのパーティーに参加しているのか訊かれたあやかは、友人に連れられて参加しているが、こういう大きなパーティーは初めてで、どうしていいかわからないのだと答える。


「じゃあ…僕がエスコートしてあげよう…行こう…あやかさん…」


「えっ…?あの…」


 いきなり紫苑にパーティーエスコートをしてやると言われたあやかは、一瞬、戸惑ったが、半ば強引にあやかの手を取った紫苑に連れて行かれるまま、パーティー会場内を歩き始める。


「心配しないで…僕に任せておけば大丈夫だから…」


 パーティーの主役の一人でもある紫苑にエスコートされるという羨望の眼差しを集める事態に戸惑うあやかに、紫苑は自分に任せておけば大丈夫だからと優しく笑いかける。


 あやかのシンデレラストーリーはここに幕を開けた。