純白の恋人ー53

紫苑の両親に、紫苑とあやかが交際を認めてもらってから、数週間後。この日から、あやかは、御影家の邸宅つまり紫苑の自宅で、住み込みで花嫁修業をすることになった。
 
 
「あやか様の教育を仰せつかった…如月です…」
 
 
「よろしく…お願いします…」
 
 
 御影家の女中頭という如月に、あやかは、よろしくお願いしますと頭を下げる。御影家の使用人の上に立つだけあって、如月は厳しそうな雰囲気だった。
 
 
「よろしいですか…?まずは…御影家の歴史から覚えて頂きます…」
 
 
「はい…」
 
 
 まずは、御影家の歴史から覚えてもらうという如月に、あやかは、壮大な歴史が詰まっているのだろうと思いながら、如月に頷く。
 
 
「それから…これは…注意です…正式な婚礼を挙げるまで…紫苑様と床を同じにすることはなりません…」
 
 
「わかりました…」
 
 
 注意として、紫苑と正式な婚礼を挙げるまでは床を同じすることはならないと、如月に言われたあやかは、紫苑が忍び込んで来たらどうすればいいのだろうと思いながらも、それに従う。
 
 
「如月。僕の未来の花嫁をあんまりいじめないで欲しいな」
 
 
 あやかが如月に色々教わっていると、紫苑が帰って来ていて、如月に、あやかをあまりいじめないで欲しいと声を掛ける。
 
 
「紫苑様。会社の方はどうされたのですか?」
 
 
「早退してもいいだろう?」
 
 
 如月に会社はどうしたのかと訊かれた紫苑は、早退しても構わないだろうと笑いかける。
 
 
「如月。席をはずしてくれ。彼女と二人だけで話がしたい」
 
 
 紫苑は、如月に、あやかと二人だけで話がしたいから席を外すように告げる。
 
 
「それでは…後ほど伺います…」
 
 
 紫苑の言葉に、如月は、後ほど伺うとあやかに告げ、紫苑に一礼して部屋を出て行った。
 
 
「行ったね…あやかさん…ようこそ…御影家に…修業…きつくない…?」
 
 
「いいえ…まだ初日です…」
 
 
 如月が部屋から出て行ったのを確かめて、あやかを抱き寄せて、修業はきつくないかと問いかける紫苑に、あやかは、まだ初日だからと、首を横に振る。
 
 
「これからは…ちゃんとこっちに帰ってくるよ…」
 
 
 あやかを抱き締めながら、これからは自宅にちゃんと帰ってくると、紫苑はあやかに呟く。
 
 
「はい…紫苑さん…」
 
 
 これからは、あやかがいる自宅にちゃんと帰ってくるという紫苑に、あやかは、嬉しそうに笑うと、紫苑に抱き付く。
 
 
 その光景を使用人たちに覗かれているとも知らずに。