純白の恋人ー9

「紫苑さん…遊びは…ここまでです…」
 
 
「遊びなんかで…女性とキスなんかしないよ…僕は…」
 
 
 紫苑の気まぐれに付き合えるのはここまでだと呟いたあやかに、紫苑は、遊びなんかで女性とキスなどしないと答え、再びあやかに口付ける。
 
 
「やめてください…こんなところで…」
 
 
「こんなところじゃなければいいのかい…?」
 
 
 車の中、しかも、運転手がいるという状況で、キスされたことに戸惑うあやかに、紫苑はこういう場所でなければいいのかと問いかけ、運転手に行き先の変更を告げる。
 
 
「どこへ…連れて行くのですか…?」
 
 
 いきなり行き先の変更を告げられ、あやかはどこへ連れて行くのかと紫苑に訊ねる。
「君とそういう事をするのにふさわしい場所だよ…」
 
 
 どこへ連れて行くのかというあやかの問いに、紫苑は、あやかとそういう事をするのにふさわしい場所へと連れて行くのだと答える。
 
 
 そうこうしているうちに、紫苑とあやかを乗せたリムジンはとある高級ホテルの玄関へと辿り着く。
 
 
「さぁ、降りて。行こうか?」
 
 
 ホテルのドアマンにドアを開けてもらい、リムジンを降りた紫苑は、戸惑うあやかに、手を差し出し、行こうかと笑いかける。
 
 
 その手を振り払っては紫苑の体面に傷がつくと思ったあやかは、紫苑の差し出した手を取ると、紫苑と共にホテルの中へと入っていく。
 
 
「ここで少し待っていてください…」
 
 
 ホテルのロビーに着いた紫苑は、あやかをロビーのソファーに座らせると、ここで少し待っているよう言い残すと、フロントへと向かっていった。
 ロビーで紫苑を待つことになったあやかは、いまから起きる事をについて色々考えていた。キスは済ませてしまったし、こういうところに来てまですることといったらやっぱりそういう事なのかという考えが過る。
 
 
「お待たせしました…行きましょう…」
 
 
 あやかが色々考えていたら、フロントに行っていた紫苑があやかのもとに戻ってきて、あやかに行こうかと声を掛けてきた。
 
 
 紫苑に手を取られ、腰を支えてもらいながら歩き出したあやかは、かつてないほどにときめいているのを感じていた。しかし、自分と住む世界の違う人間のすることだからあまり期待しないよう自分に言い聞かせる。
 
 
「緊張しないで…悪いようにはしないから…」
 
 
 部屋へと向かうエレベーターの中、緊張に身を震わせるあやかに、紫苑は、悪いようにはしないから緊張しなくてもいいと声を掛ける。
 その言葉に、あやかは、いまから始まる時間に身を震わせる。