平安恋奇譚ー35

「口付けは…初めて会った時…以来です…」


「そうだったな…」


 口付けられるのは、初めて会った時以来だと呟くまりに、蒼は、そうだったなと答え、まりに深く口付ける。


「蒼…様…」


「私たちは…もう夫婦だ…様はいらない…」


 いつものように蒼を呼んだまりに、蒼は、もう自分たちは夫婦になったのだから、様付で呼ぶ必要はないと囁く。


「蒼…」


「そうだ…まり…私のまり…」


 たどたどしく蒼の名を呼んだまりに、蒼は、まりを抱き締めながら、まりに何度も口付ける。


「もう我慢できない…体力がまだ戻ってないかもしれないが…お前も魔物の一員になったのだから…多少の無理は大丈夫だ…」


 まりへの愛しさが積もりに積もった蒼は、まりも、魔物の一員になったのだから、多少の無理は大丈夫だと囁き、まりの着ていた十二単を脱がせ始める。


「抱いて…蒼…私を…抱き続けて…」


「あぁ…抱いてやる…朝晩問わず…お前を抱き続けてやる…」


自分を抱き続けて欲しいというまりの呟きに、蒼は、朝晩問わず、まりを抱き続けてやると答えると、まりを褥に横たわらせ、まりの身体に唇を這わせ始める。


「蒼…もっと…抱いて…」


「あぁ…抱いてやるとも…お前が気を失ってでも…抱いてやる…」


 想いが通じ合った蒼とまりは、言葉通りに、昼夜問わず、抱き合い、交わり合い続ける。